2010年メイヤーズ デザイナー大賞を戴いて

 DOMO田舎レストランがこの度、デンバーの優秀な建築物、インテリア、造園などを対象としたデンバー市デザイン大賞をデンバー市長から戴きました。
 15年前日本庭園を眺めた私の先生が「14、5年したら良い庭になるな」と話していたのを思い出します。今回の賞はまさにその頃にあたります。
 レストランですから、ともすると料理の話ばかりでしたが、これまで幾つかの気になっていた事が有りましたのでこの機会に皆様にご説明したいと思います。

 DOMOのお客様からよくある質問ですが内装などに使われた木材は日本から持ってきましたか?あるいは、こんなに多くの木をどうやって入手しましたか?という質問があります。幾度かは「DOMOは自然破壊をした」などと極端な意見を述べた方もいたほどです。
 90%の木材は古材の再生利用でデンバー郊外にあるジャンク資材屋に頻繁に通って探したものです。旧デンバー市内の高層建築物の柱などに使われていた廃材を焼いてブラシをかけワックスで磨いたものです。最低でも建築資材となって100年以上はたっている古材です。スクリューやボルトが残っておりカンナなどは使えなかったため焼くしかなかったのです。しかし返ってそれが日本の古い家の趣と同じくなりました。日本の田舎の古い家は室内で薪を燃やしていたためその煤が柱などにつき味わいある独特の色に変わ虫除けなど木材保護にも役立ちました。
 
 天井から吊るされた照明はすべて川に朽ちていたコットンウッドを拾い集め竹を組み100年前の日本の道徳の本を解いてライスグルーで一枚一枚貼って私が作ったものです。使用したロープは米を取った後のストローで作った「縄」と言われるロープです。

 レストラン中央や博物館内、道場正面に使われている大木は樹齢120年余りのコットンウッドで建物内3箇所で一本の木が使われています。この大木はデンバー市内のある公園で老樹のため枝の落下が危険であるという事になったときにコミ二ティーから保護の希望がありトラブルになっていたものを「再利用する」ことで双方の理解を得てスイングルカンパニーの協力で一本丸ごと運び込んだものです。厚い皮はきれいに剥ぎ取り内装の装飾などに利用されています。根元の太い部分はテーブルの台に、幹は椅子となりました。
 各所にある扉は狭く単純なスペースを「何かあるように」するために設置したもので建築材の切り落としで作ったものです。壁もよくご覧下さい。天井に張った葦を切ったときに出た屑をあたかも土塀のつなぎの様に貼り付けてあります。

 テーブルは工事のため寄せておいた歩道の敷石でこのビルの歴史から探っても130年以上たったものです。内装に凝ったため肝心の椅子やテーブルを購入する費用がなく仕方なく残った丸太と敷石を組み合わせたのが現在の好評となりました。

DOMOはダイニングの大きなドアを開き、庭と一体となったときに本当の美しさを味わっていただく事が出来ます。

 庭はアイダホスプリングの手前にある採石場から仕入れたブルーロックを基本にボブキャットを操って土、日の2日間で造園したものです。予算が緊迫していた中で、ボブキャットは月曜に帰せば一日分で借りれたからです。図面などはなく石が動く通りにし、重くて動かせないものはそのままになっています。かえってそれが自然に見えると考えたからです。庭の樹木はホームセンターで買った小さなものでとても現在のような規模ではありませんでした。ただし二箇所池を造り魚を放し常にその水が庭の樹木に巡回しているためまったくの無農薬無肥料でもよく育っています。現在の樹形は小さい頃より挟みを入れて整えたものです。開店当初は庭の30%はオーガニックガーデンでしたが店が忙しくなり世話が大変で仕方なくパテオとなりました。
 レストランや博物館に展示してある品々は日本から運び込んだ物で特に私の出身である東北、秋田の雪国民具が中心で幾つかの貴重な資料も保存されています。
日本の民具は木材や藁でできたものが多く湿度の高い日本では長期の保存は難しくコロラドの気候はこれらを大切に保存してくれます。

 皆様、少しは日本館やDOMOの事をわかっていただけたでしょうか。隙間が出来ていたり少しテーブルが傾いていたりーーー。図面など一切なく限られた予算で再利用できるものを随時あわせていったものです。再利用から生まれたためボタンの会わないところもありますが、皆様の安らぎの場となる事を祈ってオーナーの私本間学とスコットオイルソン、ドンプラター、エミリーブッシュで作り上げた手つくりの空間です
 今後供に皆様のくつろぎの場としてご利用下さい。
       
編修部―この記事はDOMO レストランHP用に本間館長が書いたものです。